2章 愛着
3節 セルフエスティームとレジリエンスへの影響
「成功とは失敗がない状態ではなく、困難や試練を克服した状態の事を言う」。筆者が最近読んでいる本の書き出しに書いてある言葉です。この本によると、偉人達は大変な困難や試練を乗り越えて、偉人になったのではなく、むしろ困難や試練にぶつかったため、偉人になったのだと記されています。つまり、困難や試練を経験した時、挫折し諦めるのではなく、自分の能力を信じ続け、努力を惜しまなかったとからさらに成長することができた結果、偉人と呼ばれるようになったわけです。もしかしたら、どんな状況でも自分の能力を信じ続けられる力であるセルフエスティーム(自己肯定感情)と困難から回復、再生する力であるレジリエンスは成功する人の基本条件かもしれないですね。それでは、どのようにすれば、我が子をセルフエスティームだけではなく、レジリエンスも高い子に育てられるでしょうか?
実はその秘密は愛着にあるのです。
1983年心理学者であるSroufeは安定型愛着の子供が不安定型愛着の子供より自分を高く評価し、セルフエスティームも高いと報告しています。2013年、韓国の発達心理学者であるバンウンジョンとソンジヒョンの研究によると、セルフエスティームは社会的環境により発達するため、幼児が生後、初めて関りを持つ母親(養育者)の役割は最も重要であると述べています。つまり、乳幼児は母親(養育者)との関りの中で、愛着タイプが決まり、その中で、安定型愛着を形成した乳幼児は自分は価値のある存在だという認識を持つようになるのですが、これはセルフエスティームの発達に繋がると言われています。
愛着はセルフセスティームだけではなく、レジリエンス発達にもとても重要です。自分の能力を信じるセルフエスティームを土台にし、多くの場合、試練の前の状態よりむしろ成長し、強いレジリエンスを発揮させるのです。要するに、ボールに例えますと、弾きやすい素材であるゴムボールがセルフエスティーム、試練や困難がボールに与えられた力、力が加えられる前の位置より高く弾き返せるのがレジリエンスだと理解するといいでしょう。この時に愛着は、ゴムボールの中の空気の量だと考えるといいです。ボールの中の空気が足りなければボールは勢いよく弾きませんね。すなわち、多くの心理学の研究から証明された様に、愛着はセルフエスティームとレジリエンスに強い影響を及ぼしているとても大事な役割を果たしているのです。
平均寿命が100才になると言われている未来、その長い人生において誰ものが困難、試練を避けて通ることはできないでしょう。さらに目まぐるしく変わる現実に適応して行かなければならない我が子は多くの不安、困難に行き当たるかも知れません。携帯電話の小ささ、軽さに驚いていたのがつい近年の様に思えますが、いつの間にか、携帯でネットやビデオ通話をすることが普通の時代になっています。そして、会社に出勤して、汗を流し、働いた分だけ給料をもらうというのが当たり前だった時代から、YOUTUBEなどのSNSに楽しい日常を載せ、権利収入を得る事ができる時代に変わろうとしています。このように日々、激変する不安定な時代を生きる我が子がどんな困難や試練に遭っても、すぐ回復して前の状態より成長できる能力である高いレジリエンスの子、自分の能力を信じる事ができるセルフエスティームの高い子、情緒発達が優れていて社会性の高い子に育つにはまず、このすべての心理要素の根本には愛着が強く影響していることを思い出して頂きたいです。
これからどんどん複雑になりつつあるこの時代だからこそ、我が子の育児にまずは人間の本能である愛着から始めましょう。
2020年6月10日 発達心理学担当 吉田 瑞希
<GLE 事務局より>
最近、園長とか小学校校長の言葉の中に「自己肯定感」、とか「やりぬく力」などの表現が多く見受けられます。また、以前よりミッション系の学校では、家庭における愛、乳幼児期における無償の愛の大切さを強調されています。
認知能力育成に偏りがちになるときに、一番大切なことは何かを思い起こしたいものです。
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