新型コロナ流行、今秋の幼稚園・小学校受験に向け、今何をすべきか?


*社会情勢の影響

新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大の影響を受け、2020年3月2日から全国の小・中・高校が休校になるなど、大きな社会的変化が沸き起こった。これは、今秋の受験にも少なからぬ影響を及ぼすことになるだろう。いくつかの問題点を指摘する。

1)受験人口の減少

子どもが外にも出られないこのご時世に、何よりも大切な我が子をいくつもの幼児教室に連れ回すことを敬遠するご家庭も多いだろう。そういった不安や準備不足などから、受験自体を止める判断をする家庭もあるだろう。平時とは言えない環境の今年、受験人口が減少することは容易に想像ができる。言い換えれば、「何となく、受験でもしようか」という層が減り、「何が何でもこの学校に」という確固たる強い意思のあるご家庭が残ることとなる。トップ校は現状の熾烈な戦いのまま、中流以下の学校は定員確保が厳しくなるかもしれない。トップ校にしても、例年よりは倍率が下がることが予想されるが、それでも少数精鋭の厳しい争いではある。どう準備すべきかの具体策については追って掲載予定。

2)情報不足

学校説明会、公開行事、小学校展など、情報収集の機会が軒並み中止となっている。しばらくは収まらないであろう。学校の直接の声を聞き、姿を見ることができる機会が失われるということは、唯一正確な情報源はHP、学校案内のみ。しかしこれは、あまねく広く公開されており、受験者全員が公平平等、均一的に読み込んでいる。その引き写しの願書や面接ではアピールとして致命的に弱い。そうなると、在校生や卒業生といった関係者は自分の目や耳で見聞きし感じた直接情報を持っているため、「有利」と言わざるを得ない状況になる。ただし、上の子(あるいは卒業生である親本人)が学校での素行がよろしくない、あるいは親が学校に協力的でないなど、不利材料となることも当然ある。

この情報不足は、合否を左右し得る超重要ファクターだとの意識を強く持っていただきたい。なおかつ、不正確な情報は不合格への一本道と心得るべき。私どもには、30年に及ぶ幼児教室経営での学校とのつながり、信頼関係からなる、正確で豊富な情報の蓄積がある。それらの情報に基づく分析力も自負するところだ。今年は各種情報に対する必要性の情勢を鑑み、これまでは個別にお渡ししていた学校情報等を、プレミアム会員サイトにて皆さまに発信する方針とした。合格の一助として是非ともご活用いただきたい。情報を制する者が受験を制する。

3)受験者のバラツキ

親の判断として幼児教室の連れ回しが敬遠されることも予想されるが、幼児教室側としても大人数を集めた模試などを中止せざるを得なくなっている。小学校受験には集団行動観察があり、周囲とかかわる様子からその子の社会性、協調性、人間性を見る。これは、ペーパー、願書・面接と並んで合否を左右する大きな要因だ。受験生は本番当日までに行動観察に於ける「声掛け」、「提案」、「友達とのかかわり方」、さらには「座り方」、「材料の取り方」、「片づけ方」に至るまで、幼児教室で徹底的にトレーニングされる。つまり、そこには明らかな予定調和があり、それを乱す子どもはいない。しかし、今年は集団での活動練習がどうしても制限されるため、想定外の行動を取る子どもが出てくることが考えられる。試験当日のピリピリとした雰囲気の中、臨機応変に状況を判断し、ピンチをチャンスに変える言動でホームランを打てる子どもはまずいない。多くは、正しくない行為を注意できなかったり、問題を解決するだけの案が提示できなかったり、波に飲まれてしまう。結果、グループ全員が「残念でした」の通知を受け取ることになる。

*対策

1)最低限の教室利用

小学校受験は集団の中での個を見る部分の強い入試なので、目的を一にする集団の中での経験は必須となる。「不安だから幼児教室は行きません」では、やはりよい結果につながらない。今年は「幼児教室任せ」を見直す好機ととらえ、ミニマムな利用にとどめるのが賢明だろう。幼児教室は、利用されるところでなく利用するところだ。振り回されてはいけない。必要最小限のレッスン(集団)と情報収集の場として、主導的に臨機に利用する。ただし、教室によっては、完全な調査をせずに正確とは言えない情報を無責任に発信するところも少なからずあるので、そこは厳重注意。また、言われるがままに多くの講座を抱き合わせ的に取らされ、親子で疲弊するのは最低な処し方。合格につながることは決してない。相手は売上至上主義の営利団体であることを忘れてはいけない。幼児教室の利用方法については志望校や子どもの状態により個別アドバイスも行っているので、お問い合わせいただきたい。

2)丁寧な家庭生活

私どもは30年を越す幼稚園・小学校受験とのかかわりの中、多くの親子を見てきた。その経験から、合否の決め手は「家庭力(親力)」に尽きると確信を持って言い切れる。丁寧な日常生活を送ることに優る受験対策はひとつもない。愛情溢れる家庭生活と子どもの日常生活練習。子どもとじっくり向かい合って会話をし、親子で一緒に遊び、本を読み、楽しく丁寧な時間を共有することが何より大切。それこそが子どもの言語力、思考力、状況判断力、問題解決力、あきらめずに頑張る力、あるいは社会性、巧緻性、運動能力、さらには思いやりや正直さといった人間性を育て高める。園や学校が見たいのはまさにそこだ。具体的にどのように過ごすべきかを書き出すと大変に長く、かつ受験の肝の部分でもある。プレミアム会員サイトに改めて掲載する。

3)自分を育てる

「合格するのはどういう子どもですか?」という質問をよく受ける。明るい、子どもらしい、思いやりを持って周囲に配慮ができる、世の中を肯定的にとらえている、トレーニングされ過ぎていない、親子関係が良好…など、いつの時代にも確実な共通項はいくつかある。しかし、昨今の入試傾向を鑑みると、難関小学校では特に「自分を持っている」ということが色濃く問われている。「あなたはどういう人ですか?」、「あなたはどう思いますか?」、「あなただったらどうしますか?」。それらを様々な形で問うて来る。正解はない。不正解もない。これまでの入試にありがちだった「こう言ったから合格」ではなく、「私はこう思います、なぜなら~だからです」と、相手を説得し得るだけの論拠を示し、自分の言葉で話さなくてはならない。より適切な言葉で、より正確に相手に伝える力、豊かな言語力、表現力、自分の頭で考える力、すなわち、それまでの人生に於ける質の高い経験値が試されている。これは幼児教室で安易に育つ力ではないことはご理解いただけるだろう。親と日常の瞬間瞬間をどう過ごしているかが問われる。だからこそ、合否は「家庭力」で決まる。

2020年3月3日
子育ひろば 主催者 安藤 徳彰


About 安藤徳彰

(あんどう のりあき) 慶應義塾大学卒業後、ペンシルバニア大学大学院(ウォートンスクール)にてMBA取得。 ICE幼児教室、ICE私立専門塾などを創業。2014年6月に教育部門の運営を栄光グループにバトンタッチし、株式会社栄光の教育顧問に就任。 2015年10月に株式会社栄光顧問退任