新型コロナウィルスによる学校の対策


(韓国、アメリカ、日本の比較)
~ そこから見える日本の小学校の対応、その問題点と今後の課題 ~

4月4日東京で新型コロナウィルスの感染確認された人は118人になり、とうとう1日の新たな感染者数が100人を超えました。2月の末、休校から始まった「無理やり春休み」はもうすぐ終わります。しかし、新型コロナウィルスは収まるどころかますます増え、東京だけで、一日の感染者数の新記録を日々更新中です。現在、日本の感染者数は氷山の一角でしかないと海外では言われています。感染者数が世界で一番多いアメリカでさえ(2020年4月4日基準)、在日アメリカ人の帰国を呼び掛けています。日本も深刻な状況に対応するため、4月開校をゴールデンウィーク明けに延期した小学校も多く出てきました。これは2ヶ月前、韓国の状況に似ている気がしてなりません。

・韓国の対応

韓国の学校は日本より1ヶ月早く、3月に始まります。しかし、2週間、また2週間と延期され、4月からはオンラインでの授業が決まりました。小学4,5,6年生は16日、小学1,2,3年生は20日からオンラインでの授業が始まります。しかし、小学校低学年の場合、オンラインでの授業には、やはり保護者の同伴が必要とされるため、EBS(日本のNHK)などのネット上の動画で勉強できるシステムを利用しながら子供にオンライン授業に適応させようとしている保護者も出てきています。ソウルで最も小学生の学力が高いとされているカンナム所在のある小学校では、低学年の場合、うまくいかないのに決まっているから、この際、アメリカの様に9月から新学年を始めるように要望する保護者も多く出てきています。

<韓国の対応の変更>
4月5日、韓国では長い休校による小学校での対応方針に変更がありました。上記でも述べましたが、1,2年生の場合、集中力などの問題を心配した保護者達の声を反映し、オンラインではなく、EBS(日本のNHK)のテレビ放送を利用して遠隔授業を行う事になりました。学校が作ったオンライン学級ページで保護者が出席確認を取る方法か教師と保護者が携帯のメッセージでやり取りをする方法で出席確認をします。EBSテレビを利用することで、ネットに繋がりにくい家庭でもテレビを通して家庭学習ができます。低学年でも慣れているテレビを用いて学習ができる事と、再放送を見る事も可能になります。4月20日から、韓国の1,2年生の小学生はテレビの授業を視聴しながら学校から送られて来たテキストを解くという形で国語、算数だけではなく「美術探検」、「ソフトウェアと遊ぼう」と言った創造的なプログラムも参加できるようになります。EBSテレビでの授業が1,2年生だけではなく、オンライン授業を視聴中である小学校の中高学年はもちろんのこと、中高校生もEBSの臨時プログラムを視聴することが可能です。子供が保護者の最小限の協力を得て(出席確認)、1ヶ月以上続いていた学習遅れを取り戻す事を期待しています。

・アメリカの対応

アメリカは日本や韓国と比べると新型コロナウィルスの感染者が正式に確認されたのは遅かったのですが(麻酔科医の筒井冨美氏は、アメリカで去年の冬、新型インフルエンザーでの死亡者の内、実は新型コロナウィルスが原因だった人もいたかもしれないと主張しておりますが、)、現在感染者が急激に増えていて、国民全体の危機意識はとても強いです。マスクをするという認識はあまりなかったものの、社会的距離(2メートル)は保とうという認識と、新型コロナウィルスの怖さについては日本人より敏感に感じている印象を受けています。アメリカの場合、3月に休校が始まり、5月から登校開始の予定だったのが、現在は8月に延期されており、8月も危ない、実際9月にならないと登校は難しいというのが多くの保護者たちの意見だそうです。会社も在宅に変わり、ネット会議を行っています。現在、シリコンバレーの小中学校はオンライン授業を実行しています。ライブで授業を聞き、先生が出した宿題をメールで提出するという形で行われています。シリコンバレーに住んでいる知人によりますと、外出も一切控えて、スーパーなどで買い物をしてきた場合、買って来た物の袋もすべて消毒するそうです。

・日本の対応

日本はオンラインでの授業を行う予定である小学校の話はまだ聞いていません。オンライン授業を行う予定だという多くの塾も出てきていますが、小学校はオンライン授業より休校を選んだように見えます。4月3日の発表で東京23区の内20区は5月に、多摩地域の場合、30の自治体の内25が5月に開校を延ばしました。私立小学校もゴールデンウィーク明けに開校を決めた学校も出てきています。しかし、今の状況ですと5月の開校も難しいかもしれません。4日の新たな感染者118人のうち、81人の感染経路が不明だそうです。そして、外では普通にマスクをつけずに歩いている人や、友達と群れておしゃべりをしている人をよく見かけます。小池都知事がほぼ毎日のように不要不急の外出自粛を強く要望しても、まったく危機感を感じない人が多いように思えて仕方ありません。「多分大丈夫」という安易な気持ちでの行動が他人の掛け替えのない家族の死の原因につながるかもしれないという意識を持って、自分そして家族、そして、友達の友達の友達の親戚かもしれない誰かのために、この状況を真剣に捉え、危機感を持って行動して欲しいです。

まだまだ、継きそうな新型コロナウィルスの拡散に、かつては、世界最高峰の技術を誇った日本が小学校に対してどのような対策を提案するか、注意深く期待を持って見守っていきたいと思います。

[関連情報]

日本も学校ではありませんが、無料オンライン授業を開講している企業はいくつかあります。役に立つサイトもありますので、紹介したいと思います。

― 無料オンライン授業のサイトの紹介 -

長い休校は実は学びの停止ではなく、おさらい、先取りのチャンスでもあるのです。勉強のことだけではありません。親子で話す機会も増えますし、在宅ワークをすることによって、普段一緒にできなかったお昼ご飯も一緒に食べられるわけです。沢山コミュニケーションを取り、もっと深い親子関係を築くチャンスでもあります。この終わりが見えない、真っ暗なトンネルのど真ん中にいるような不安な時期はいずれ終わります。きっと少しづつ明かりが見えて来て、いつか必ずWHOが新型コロナウィルスの終息を発表するはずです。それまでは、小池都知事の「不要不急の外出自粛」の要請にまじめに従いましょう。小学校も21世紀らしい対策を取り、子供の健康と命を第一に考えて欲しいです。

2020年4月5日
吉田 瑞希


<以下 事務局よりコメント>

日本はデジタルインフラの整備が甚だ遅れている。その対比のために、今回はアメリカと韓国を引き合いに出した。先日のコラムでも述べたように、例えばエストニアでは1998年にはすべての学校がインターネットに接続された。韓国でもIQよりITといわれ、今ではその先を進もうとしている。
日本では、文部科学省が2023年度までに全国の小中学校で一人一台の端末を配備する計画だ。東京都内でも遠隔授業を全面実施するには50万台以上不足しているとされる。練馬区では20年度中に区内の全小学校に端末を配備する計画だが、実際には12月以降になる予定だ。
私立小学校がどのような対応を取るのか今後注目していきたい。

コロナの影響は世界規模であるので、一旦国内で収束しても2次、3次の感染拡大のリスクもある。ICTによる遠隔授業ができる様に急がねばならない。

思うに東京オリンピックは壮大な無駄遣いの一環であった。建築物もオリンピック後には負の遺産となるものが多い。ローマ帝国は市民を懐柔するためにコロッセオを建築し、剣闘士の試合などを行ったが、ローマ市民の堕落の始まりであるとも言われ、やがてローマ帝国は滅亡した。


About 吉田瑞稀

聖心女子大学(卒) 人間関係学専攻 UCL University of London大学院(卒) MSc in Psychoanalytic Developmental Psychology (修士:精神分析的な発達心理学専攻) 淑明女子大学院 児童心理治療専攻(博士課程終了) プレイセラピスト