各発達段階には発達課題がある
幼児教育研究者の成果の紹介 エリクソン
今回から、研究者の中から代表的な人の発見をたどりたいと思います。その中で、私なりの解釈を付け加えていきたいと思います。 エリクソンは多くの発達心理学者に影響を与えています。佐々木正美先生もエリクソンを学びました。
エリクソン(米国) 乳児期の「基本的信頼関係」確立の重要性を主張、ライフサイクルモデルの構築しました。
エリクソンは人間の成長を8段階に分けて考え、それぞれのライフサイクルを健康に幸福に生きていくためにはそれぞれの段階で、解決しなくてはいけない発達課(CRISIS)があると説きました。一つの発達課題をクリアしないと、次の段階にいけないとしました。私の関心は、乳児期の「基本的信頼関係」が上手く構築できないと、何故、次の幼児期の課題の「自律性」が確保できないのかという疑問です。
エリクソンの発達段階
- 乳児期(0歳~2歳 幼児前期 発達課題は「基本的信頼関係」の獲得)
- 幼児期(2歳~4歳 「自律性」を身につける)
- 児童期(4歳~7歳 「自主性」を育む)
- 学童期(7歳~12歳 「勤勉性」)
- 思春期・青年期(13歳~22歳 「アイデンティティ」の形成)
- 成人(23歳~35歳 「親密性」)
- 壮年期(36歳~55歳 「世代性」)
- 老年期(56歳~「人生の統合」)人生の初期(乳児期)の発達課題は「基本的信頼関係」の確立である
子どもが望んでいるように愛してあげた結果が、子どもが母親を始めとする周囲の人を信じ、自尊心と、自信が生まれ、意欲や感情が育っていく「母は子どもにとって人類とかかわる最初の扉である」、「母親が赤ちゃんといることが楽しい(赤ちゃんが母に与えている価値)、と思えば赤ちゃんも母親と居ることが楽しい(母親が赤ちゃんに与えている価値)と感じる」、「これが基本的信頼関係(愛着)形成の始まりだ」と述べています。 「人は人(赤ちゃんの時は母親か祖母等)を信じることでしか、自分を信じることが出来ない。信じることができる人を持つことが、自分を信じることの絶対条件である」とも述べています。
人生の初期(乳児期)に子どもが望んでいるように愛してあげた結果が、子どもが、母親を始めとする周囲の人を信じ、自尊心と、自信が生まれ、意欲や感情が育って行く。
「エリクソンは、人間の発達や成熟には一定のステップ・アンド・ステップがあると言っています。そして、そこにはとび級はないと言っています」(佐々木正美書『あなたは人生に感謝できますか』より引用)
乳児期の「基本的信頼関係」が構築されないと、何故、幼児期の発達課題の「自律」が上手く行かないのか。考えてみたいと思います。
今回は乳児期の、「基本的信頼」についての紹介ですが、幼児期になると「自律」が発達課題となってきます。しかし、「基本的信頼」が十分に形成されなければ、「自律」もうまくいかないのです。「自律」とはセルフ・コントロールの事です。脳科学的に表現するならば、「自己制御力」です。目標達成のために自分の行動をコントロールする能力は最も重要な脳の基本機能です。将来、勉学だけでなく、人間関係等を築くのにも重要です。自己制御力が発達するためには、脳がある程度成熟している必要があります。
- 乳児期に、母親から十分なスキンシップを受けたり、インタラクティブ(社会的相互作用)な対応を受けると赤ちゃんの脳に刺激が伝わり、脳は活性化します。同時に満足して、ドーパミン等の脳内ホルモンを分泌します。これが A10ニューロン(神経細胞)を成長させ、A10ニューロンは脳幹の先から伸び、脳の前頭葉に向かって張り巡らされるのです。