成長の樹3 EEE(Evolutionary 進化的に、Expected 期待された、Environment 環境)


EEE(Evolutionary 進化的に、Expected 期待された、Environment 環境)

注目すべきは、近年、脳科学の進化が著しく、子どもの脳の発達の順序、様子、各種脳内ホルモン等との関連が最新の脳科学で解明され、どの様な子育て・教育が望ましいか、または子どもを損ねるのかが次第に分かってきたことです。今までは膨大な子どもの観察から得られた知見が、脳科学の進化により、脳の作用の内側から解明されてきたことです。また、海外における多くの研究、実践によって多くの新しい事実が分かってきました。
日本の脳学者の中にも、『世界一の子ども教育 モンテッソーリの教育』(永江誠司 講談社)が脳科学の立場からモンテッソーリ教育法の効能を解説しています。
同じく脳科学者の澤口俊之博士は永い人類の歴史の中で保障されていた、「子どもたちが健全に育つ当然の環境」に注目しました。8 歳までの子どもは、本来は当然に存在する環境と関わることで健全に発育すると主張しました。

進化的に約束された子どもが育つ当然の環境を、EEE(Evolutionary 進化的に、Expected 期待された、Environment 環境)といいます。「人との関わり」、「自然との関わり」、「日常生活との関わり」、「知的好奇心をそそる世界との関わり」などです。本来はこの環境の中で、適切に子どもの「伸びようとする DNA を引き出す援助をすれば、子どもは健全に育つのです。この環境(EEE)が日本では急速に失われてしまいました。
この状況が、日本の若者の社会的不適応が広まった理由 です。
この環境(EEE)の中で、体内にいるときから子どもの人格に大きくかかわる要素が「母親の無償の愛」です。それ以外の家族や保育士さんの愛情もありますが、母親の愛には代位できないのです。妊娠しているときから両親が穏やかな気持ちで過ごせる、体内の赤ちゃんを慈しむ、赤ちゃんと授乳やケアを通してスキンシップをする。これらは皆、赤ちゃんが当然にして期待している環境(Environment)なのです。中国、韓国、日本の若者を比較した研究では、母親の体臭を覚えている人ほど、「意欲的で、優れている」ことがわかりました。また、日本人は母親の体臭を覚えている人の割合が極端に少ないことも分かりました。(佐々木正美先生の著書より孫引き)
精神科医の岡田尊司は「人間が幸福に生きていくうえで、最も大切なもの―それは安定した愛着である。愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形造っている。」と述べており、近年、「回避性愛着障碍((絆が希薄な人たち)」が急増していることに警鐘を鳴らしています。

図1 EEEの欠如

例えば、核家族であったり、一人っ子であったりすることが、人と関わる機会を薄くしています。また、その親も核家族で育ち、人との関わり合いは苦手であったりするケースが多いのです。人との関わり合いが苦手なカップル同志が、人との関わりの薄い環境で子育てをする。このようにして、放っておくと負のスパイラルが始まります。日本では、高度経済成長、核家族化等と共にこのスパイラルは始まったのです。最近は女性の社会進出や国民の貧困から、女性が出産直後から働くケースが増えました。

*幼稚園受験の両親面接でも、「一人っ子さんですね。どの様な子育ての工夫をされていますか」等 の質問がされます。この劣悪な子育て環境の中で、どの様な対策・工夫をしているのか、子育て 実践を聞き、その家庭の子育て力を評価したいのです。また、よくある話ですが、ご主人が地方 出身で国立大学を卒業されている場合、幼小受験にお父様が懐疑的な場合があります。しかし、ご主人を育んだ様な環境(EEE)が都心近隣には存在しないことが多いのです。公立校の現状を ご存知ないことが多いのです。そこで私立一貫校にて学ぶことが選択肢となるのです。

日本の教育の傾向として、生まれたときから「人格を形成する」、「人間の全体を形成する」という観念が薄く、人間関係のスタートである、乳児期における母(または、祖母)との「基本的信頼関係」の構築をおろそかにしています。その後も、子どもの社会性構築に努力を注ぎません。未だに多くの幼児教育が「IQ を高める」、「天才児をつくる」ことを標榜していますし、また「右脳教育」と称して特殊な教育をするところもあります。
親も子どもの将来生きていくための人格を形成することよりも、子どもの見せかけの知能を上げることに関心を寄せている気がします。乳幼児期にIQで計られる認知力を高めることと、この子どもが将来「伸びる子」に育って社会的成功を収め、生き甲斐のある人生を過ごすこととの相関は示されていません。また、子どもの頃にIQトレーニングを受けたおかげで、ノーベル賞を取ったとか、大手IT企業の創業者になった人筆者は知りません。

以上


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安藤徳彰

About 安藤徳彰

(あんどう のりあき) 慶應義塾大学卒業後、ペンシルバニア大学大学院(ウォートンスクール)にてMBA取得。 ICE幼児教室、ICE私立専門塾などを創業。2014年6月に教育部門の運営を栄光グループにバトンタッチし、株式会社栄光の教育顧問に就任。 2015年10月に株式会社栄光顧問退任