愛着行動は哺乳類の本能


「我が子が可愛ければ、決しておんぶ抱っこをするな!」、「泣いている子をあやすな!」現代では考えられない育児法ですが、これは1950年代、実際アメリカでもてはやされていた育児法です。実は当時、スキナーもフロイトも「スキンシップは子どもをダメにする近道」と主張していました。とにかく、親は我が子を強い子に育てるために、とてつもなく厳しい育児をしていました。新生児でさえ、親と離れて寝かされ、夜泣きをしても決して、あやしてはいけないと信じていました。つまり、親の役割とはただ栄養バランスの良い物を食べさせ、手入れの行き届いた洋服を着せれば良いと思っていた時代です。しかし、1958年、「スキンシップこそが真の愛情だ」と主張した心理学者が現れます。当時これはセンセーションを起こすことになるのですが、このハリーハロウという心理学者は子供が必要とする愛とは何かという事を調べるために人間のDNAと94%が同じと言われているアカゲザルで実験をします。彼が行った実験はロボットで2人の偽母親を作り、赤ちゃんがどの偽親を好むかを観察しました。偽母親の一人はミルクはないけど、柔らかい毛布で出来ている偽母親ともう一人は硬くて冷たい鉄製だけど、ミルクを持っている偽母親を作ります。そこへアカゲザルを入れるとサルは毛布の偽母に常に抱きついていて、お腹が空いた時だけミルクを持っている偽母親に抱きつくということがわかりました。彼は、毛布の偽母親に障害などを作り、サルが近づきにくくするのですが、それでも必死に毛布の偽母親に抱き付くサルを見て彼は確信するようになります。愛にはスキンシップは欠かせない。親の役割はフィーディングよりもスキンシップにあると主張をするようになります。当時の育児法とは正反対な事をハロウは発見し、立証までも成し得ます。それまで厳しさが愛だと信じ込んでいた親たちは大変戸惑ったと思います。

このようにすぐ新しい理論が生まれるからでしょうか?「昔は今のような育児法をしていなかったけど、問題はなかった。」、「子供は皆それぞれなのにどうして皆と同じ育児法を当てはめようとするの?」、「教科書や理論は信じない。育児は教科書通りにいかないものだ。」などと言う保護者もしくは祖父母が少なくないと思います。筆者が児童相談所で働いていたとき相談に来た保護者から、家族の一員からこのような事を言われていると度々伺いました。

実は筆者も育児は教科書通りにはいかないと思っています。そして、理論も時代によって変わっていくこともあるので、今重要だと思われていることが何十年後も必ずしも同じであるとは思いません。実際IQを高める事を重要視する時代からEQを重要視する時代に、そして愛着、今は自尊感情を高める育児法がより重要視されているように思います。

確かに時が経つと新しい理論が生まれるため、時代やその時代の背景によって重要とされる育児法は少しづつ変化せざるを得ないかも知れません。しかし、どんなに時が立っても、我が子を抱きしめ、母乳をあげ、沢山スキンシップをして愛情を注ぐという、むしろ人間、いや動物の本能に近い愛着行動の重要性は、時代が変わっても人間が哺乳類である限り、変わらないと思います。

2019年10月27日
吉田 瑞希

 

 


吉田瑞稀

About 吉田瑞稀

聖心女子大学(卒) 人間関係学専攻 UCL University of London大学院(卒) MSc in Psychoanalytic Developmental Psychology (修士:精神分析的な発達心理学専攻) 淑明女子大学院 児童心理治療専攻(博士課程終了) プレイセラピスト