グローバルリーダーの育成(7) ~ 必要条件 ~


暁星小学校の小学校英語教育は高い評点を付けられるべきですが、必ずしもグローバルリーダー育成を目指したわけではありません。医学部や難関大学に毎年多くの合格者を出している同校は、2020年の大学入試制度の改革に向けて、「企業努力」をしているのです。私立はどこも生き残りのため「企業努力」をしています。税金が公立校にばかり使われるのも、教育の多様性確保の見地から、歪んだ状態といえます。

グローバルリーダーになるための必要条件

グローバルリーダーになるための必要条件はいくつかあります。今後話を進めるために整理しておきます。

  • 英語が自由に使いこなせること。
  • 自分で考え、問題解決できる能力が育成されていること。創造することができること。
  • 自己を主張し、他者を受け入れる、互恵的な関係を築けること。
  • 情報処理能力など、時代に求められる能力・資質、つまり、キーコンピテンシーが備わっていること。
  • 海外留学の経験があること。

明治維新より活躍した人材の多くは海外留学経験者でした。伊藤博文も井上馨、大久保利通、福澤諭吉もそうです。また、日露戦争で膨大な戦費を海外から調達した高橋是清や講和条約の締結に貢献した金子堅太郎も留学組です。現在、起業して成功しているソフトバンクの孫正義、楽天の三木谷浩史、オリックスの宮内義彦なども留学組です。

政治家には正規留学組が少ないようです。(遊学を留学と称しています)だからドメスティックな発想しか出来ないのです。例外は小池百合子 東京都知事です。彼女は結婚しない理由を『だって碌な男がいないじゃないですか』と言っていますが、うなずけます。

留学組は幅広い見識と行動力を持っています。留学経験は極限の状況の中で生き抜く体験にも繋がります。この様な体験は、日本の教育に欠けるものです。

英語能力取得の敏感期

「敏感期」を逸した教育は能力の取得を困難にします。

「音声の敏感期」  3歳までに音声にかんする能力は完成する。

「文法の敏感期」  7歳までに文法にかんする能力は完成する。

「文法の敏感期」に関しては、先述した米国移民に関する調査で、7歳を超えて米国に移民した韓国・中国語を母語とする子どもの英文法取得能力が、7歳を過ぎて移民した場合は、急速に劣化することが判明しました。しかし、この調査で判明したことは、「文法能力」です。

では、「音声の敏感期」である3歳までに移民した人の英語音声能力はどうでしょうか。
学術的な調査結果は手元にありません。ただし多くの人にヒヤリングした結果は、次の通りです。
幼児英会話を指導しているネイティブスピーカー:「英語を始めた年齢が早ければ早いほど、聞き取る力、話す能力が高い」
留学生・海外駐在員:「複数の子どもがいる場合、下の子どもほど英語が上達する。3歳までの子どもは、完全にバイリンガルになる」

具体的な事例を挙げましょう。

2016年のクリスマスに、オーストラリアから一時帰国している、ある家族と食事をしました。4人家族で上の子どもは10歳、下の子は7歳のときの移住でした。日本の教育に疑問を感じて14年前にオーストラリアに移られました。先ず、御両親は「英語はからっきし駄目で」悪戦苦闘しているそうです。ご両親に言わせると。「上の子と、下の子とでは、英語能力が断然違う」とのことです。上の子は思うように英語力が伸びないのだそうです。
しかし、下のお嬢さんに言わせると、「自分よりも2歳から3歳でオーストラリアに来た友達は皆素晴らしい英語脳力を持っている、完全なバイリンガルです」とのことです。私からみればバイリンガルに見えるお嬢さんも、7歳での移住の場合は、基本的な文法ミスはしないものの、完全なるバイリンガルではない部分があるのでしょう。

上記の様な事例を私は数多く知っています。私の母方の祖父母はアメリカの日系人一世ですが、日系人一世は皆英語が苦手だそうです。
2020年から日本でも小学校5年から英語が教科化されますが、真正のバイリンガルを育成するならば、乳幼児期から英語を始める必要があります。日本人全員がバイリンガルになる必要もありませんが、来るべき時代ではより多くの若い人が、不自由なく英語を使えなくては、活躍の場がありません。時代に取り残された人材になるのです。
「敏感期」に配慮した英語教育では、乳幼児からネイティブスピーカーの英語に触れさせることが必要ですが、この条件を満たしている教育システムは日本では少ないのです。暁星も幼稚園がありますが、そこを英語教育のスタートとは位置付けていないのです。

話が戻りますが、2016年のクリスマスに知人のお嬢さんと話していて驚いたことは、会話が「長期予測・戦略」などの難解な話に及んだとき、彼女の幾つかの質問は「本質を突く」ものでした。普通の日本の若い人はそのような質問をしません。お父様曰く「オーストリアの教育は考えることを重視していますね」、本人は「小さいときから、ディベートとか、自分の考えを述べさせるトレーニングを積み重ねて来ました」と言っていました。今でこそ教育界では、「クリティカルシンキング」とか「アクティブラーニング」とか言い始めましたが、欧米では長い伝統があるのです。

グローバルリーダー育成のための理想的な教育環境は少ないのですが、チャレンジしている学校もあります。次回は玉川学園と国際バカロレアについて述べたいと思います。本来ならば、(7)で述べるところでしたが、一回考えを整理いたしました。


安藤徳彰

About 安藤徳彰

(あんどう のりあき) 慶應義塾大学卒業後、ペンシルバニア大学大学院(ウォートンスクール)にてMBA取得。 ICE幼児教室、ICE私立専門塾などを創業。2014年6月に教育部門の運営を栄光グループにバトンタッチし、株式会社栄光の教育顧問に就任。 2015年10月に株式会社栄光顧問退任