グローバルリーダーの育成(3) ~ 大丈夫か、日本の英語教育改革 ~


♢♢大丈夫か、日本の英語教育改革♢♢

 

今までの教育改革の成果と今後の懸念

2020年から英語教育は「小学校3年生からの必修化」(週1単位 年間35単位時間程度)、「小学校5年生からの教科化」(週2単位 年間 70単位程度)が始まると本年度8月1日に文部科学省からポイントが示されました。韓国、中国に20年遅れで日本もスタートラインに立ちそうですが、準備や運営は大丈夫なのでしょうか。 「ゆとり教育」のときも、多くの現場では何をどの様にしたらよいにか分からず、狼狽し、それが教育改革の成果を半減させたとも聞いています。「総合の時間」をどう活用するかは、現場でノウハウの蓄積がなくては上手くいきません。私立小学校ではそれ以前に総合の時間の様な取り組みがあり、その経験の積み重ねがあったので混乱を生じなかったところが多かったと聞いています。(私が話した私立小学校の校長、教頭先生の意見の集約です。) 英語教育に関して言えば、文部科学省は2003年に「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」を示しました。2011年には「提言」を取りまとめて公表しました。この「提言」の中で「行動計画は、その目標を達成できなかったと評価せざるを得ない」としています。また、「提言」では、2016年までの提言の達成を明記していますが果たして達成はできているのでしょうか。2020年までに日本人英語専科教師の増員トレーニングは間に合うのでしょうか。

ネイティブスピーカーの確保

改革成功のための一番の問題がネイティブスピーカーの採用です。日本人教師とのTT(ティームティーチング)を行うのであれば大量のネイティブスピーカーを採用しなければなりません。現状でも人材難で、英会話学校でも訛のある教師(フィリピン系とかニュージーランド人で訛の強い人とか、ウクライナ人とか 米英の育ちでない人)が大勢紛れ込んでいるのです。質の高い人材確保の準備はされているのでしょうか。ネイティブスピーカーの教師招聘には、予算措置はもちろんのこと、国家レベルの動きをするべきです。イギリスもEU脱会の後、「英語」を輸出(教師を派遣)できるとすれば、教師派遣に関する提携は、日英にとって互恵的・戦略的な取り組みとなります。 英語は音声言語です。日本語には無い音が沢山あります。それを聞き分ける耳を持たないと、音声的なコミュニケーションが難しくなります。そのためには、年齢が低いうちに、ネイティブの英語を聞くことが必要です。日本人の先生の発音で指導を受けるということは、音声面でむしろ悪い影響を与えます。従来、日本人が英語によるコミュニケーション能力を持てなかった原因の一つは、若いときネイティブの発音に接する機会が少なかったことによります。もし、2020年に「小学校3年生から必修」、「5年生から教科化」として英語教育が始まっても、質の高いネイティブスピーカーが確保できなくては、期待するほど効果は上がらないでしょう。確保できなければ、日本人の教師が小学生にカタカナ英語を教えるのでしょうか。今までの日本の英語教育を受けた人が発する英語は、音声的にはEnglishではなく、Japanglishなのです。日本人は全員、日本の英語教育の犠牲者なのです。国は長期間これを放置してきました。

留学して直面した問題

私のアメリカの大学院留学時の経験からも、文法的に正しく話しても日本人の英語はネイティブスピーカーには通じない部分が多く、また、日本人は、微妙な、大切な部分が聞き取れないのです。例えば、low、law、row、rawのどれなのか瞬時に聞き取れなければ早口の会話やスピーチまたは交渉の場で意味の解釈ができないのです。英語には日本語にはない音が色々あります。 日本人が音の敏感期を過ぎて幾ら努力しても音声面での壁があります。私の留学先の日本人は日銀、興銀や野村証券などのから派遣されたエリートでしたが、入学当初は授業の終わりに皆で集まり、宿題が出たのか、何が出たのか確認し合いました。一人の力では聴き取れないのです。それが日本の英語教育の成果です。これでは真のグローバルリーダーにはなれません。ちなみに国連で働いている日本人は少ないのです。また、日本の某大手メーカーの社長が、アメリカ人のCEOと直接電話で話せなかったという話を新聞のコラム等で見かけましたが、そのようなことは当然起こるでしょう。私の体験でも、留学後、私がジャスコ(現在のイオン)に勤めていたとき、アメリカの銀行協会の使節団が来社してその通訳をしました。長い演説のうち聞き取れない部分が多々ありましたが、腹を決めて、自分の知識で穴埋めして適宜に通訳しました。幸い岡田社長にも、林副社長にもばれず、多くの聴衆にも気が付きませんでしたが、重要な交渉事ではこの様な曖昧さは済まされません。 我々日本人は英語耳を作る時期を逸してしまっていたのです。日本人が21世紀にグローバルな世界で活躍するためには何時から英語を始めたらいいのでしょうか。小学校3年生からで大丈夫なのでしょうか。 英語耳を作る事例として恥ずかしながら経験談を申し上げますと、私の娘たちは幼稚園のときネイティブスピーカーから週一回英会話を習っていました。その後特に努力しませんでしたが、高校卒業後の米国大学の夏期語学研修のクラス分けテストではトップレベルでした。他の日本人留学生たちは皆、中級クラスでした。次回では、「英語耳」を何時育てるかということについてお話しします。


安藤徳彰

About 安藤徳彰

(あんどう のりあき) 慶應義塾大学卒業後、ペンシルバニア大学大学院(ウォートンスクール)にてMBA取得。 ICE幼児教室、ICE私立専門塾などを創業。2014年6月に教育部門の運営を栄光グループにバトンタッチし、株式会社栄光の教育顧問に就任。 2015年10月に株式会社栄光顧問退任